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患者Aさんは60代後半、病状は肝硬変の末期でした。

症状は倦怠感、黄疸が著しく表れ、体力も消耗して寝たきりの生活を余儀なくされていました。食事ができないため点滴で栄養を補うような状況で、やせ細ってしまい毎朝の採血も痛みを訴えています。肝臓・腎臓の機能は徐々に悪化していっており、これ以上の治療は難しいと言えます。

今回はAさんの治療方針を巡って、話し合いを続けた看護師と医師のエピソードを紹介していきます。


余命がそう長くない旨は親族に伝えられており、今後の処置・治療をどうしていくか医師は悩んでいましたが、一方でAさんを受け持っていた看護師は「死が刻々と迫っている中、毎日痛みを訴えているにも関わらず肝機能の検査の為に採血する必要があるのか?」という疑問を抱いていた。看護師は、Aさんの状態や訴えを自分が一番理解しているという思いもあり、医師の指示をそのまま受け取らずに処置を行っていたのです。Aさんはこれまでに何度も入退院を繰り返しており、すでにAさんがご家族を大切に思われていることや、痛みを伴う処置を苦手としていることを知っていたからです。看護師はどうすればAさんが幸せかをあらゆる面から考え、医師に提案しチーム全体でも話し合いを繰り返し行いました。最終的に、採血を数日に1日へ減らす方法をとったのです。

看護師と医師の毅然とした対応に、「病気とともにある人」を見守っているという自負を感じられます。日頃から看護師は病と闘う患者がよりよい治療を行っていけるように、医師やそのほかの看護職と情報共有・提案・相談を重要視しています。そして患者や患者のご家族が何を求めているのか、同治療を行っていくことが最善かをチームで共有するのです。


Aさんはその後、ご家族やスタッフに見守られる中安らかに息を引き取りました。こまめに家族と医師・看護師の医療チームで治療方針をしっかり話し合っておくことで、必要以上の処置を避けることができ、安らかな最期を迎えることが可能になるといえるでしょう。