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今や医療の現場における書類業務もどんどん電子化されており、大手の病院を中心に電子カルテの導入実績も高まっています。

さらには電子カルテ同様、毎月の診療情報明細書をまとめたレセプトも、厚生労働省による指導もあり、現在はほとんどの医療施設で電子化されています。

そこで今回は、歯科医院における電子レセプト導入の現状に加え、今さら人に聞けない電子カルテと電子レセプトの違い、そしてレセコンについて詳しく解説します。

電子カルテと電子レセプトの基本的な役割

同じように医療の現場で使われている電子カルテと電子レセプトですが、両者には明確な役割の違いがあります。そこでまずはそれぞれの詳しい中身を解説します。

電子カルテは紙のカルテを電子化したもの

医療現場における「カルテ」は、医師や看護師など、患者にまつわる医療スタッフが診療やリハビリの内容を記録したとても重要な書類です。

そのためあってはならないことですが、患者から医療訴訟などが提起された場合、裁判の場ではカルテの記載内容が重視され、カルテの書き方一つで裁判の結果が左右されるといわれるほど重要な存在です。

昔は紙に手書きしたものが保存されていましたが、1999年に当時の厚生省(現:厚生労働省)からカルテ等の電子保存を認める通知が行われたことにより電子カルテ化が進行し、2020年に厚生労働省が公表した「日本における医療情報システムの標準化に係わる実態調査研究報告書」によると、歯科診療所において厚生労働省標準規格を実装している電子カルテシステムを導入している施設は全体の44.2%という数字が出ています。

電子カルテ導入のメリットには、次のような点があります。

●入力作業や後で情報検索する場合の業務の効率化

●紙カルテと異なり保管場所が不要

●読みづらいくせ字等による薬の分量などの認識違いが起こりにくい

●複数のスタッフが違う場所で同時にカルテを閲覧でき、訪問診療などにも対応できす

このように電子カルテの導入には作業の効率だけではなく、医療事故を防ぐ役割も期待できます。

電子レセプトは診療明細請求に必要な書類

一方、同じく医療機関で使われている書類でも、レセプトはカルテとは全くその役割が異なります。レセプトとは、ドイツ語でレシートを意味する言葉で、医療現場においては医療機関が診療報酬を請求するための明細書情報のことを指す、いわば請求書のような存在です。

2011年度から免責の条件を満たした一部の例外を除き、すべての医療機関(病院、診療所、薬局)は電子レセプトによる請求が義務づけられています。

電子レセプトの請求方法には、ネットワーク回線を通じて請求の授受を行う「オンライン請求システム」と、専用機やソフトを導入してレセプト請求用のファイルを作成し、それを外付けのメディアなどに書き込んで郵送する「電子媒体による請求システム」の2つの方法があります。

電子レセプトは今やほとんどの歯科診療施設で導入されており、2020年に厚生労働省から発表された「レセプト請求形態別の請求状況」によると、電子レセプトの普及率は全体の95.4%にまで達しています。(資料:レセプト請求形態別の請求状況 厚生労働省)

ただし電子レセプトの請求方法に関しては、実は一般的な医療機関と歯科診療施設では大きな違いがあります。厚生労働省が発表した2020年3月の診療報酬請求状況によると、医院におけるオンライン請求の割合が400床以上の施設では98.4%、診療所においても74.2%であるのに対し、歯科ではオンライン請求が24.8%(電子媒体請求が72.9%)にとどまっています。

電子カルテと電子レセプトの融合で作業効率がアップする

このように異なる役割を持つ電子カルテと電子レセプトですが、実際の現場においては両方を併用することで作業の効率アップにつながる場合があります。

そもそもレセプトは実際に医療機関が行った診療実態を保険点数に数値化して作成するものなので、電子カルテと連携させておくことで実際の診療実態の反映が容易になり、レセプト作成のためにわざわざ電子カルテの記載内容を入力しなおすといった作業が不要で、作成業務をスピーディーに行うことができるためです。

さらに両方のデータを連携させておけば、一方のデータに追記や修正を施せばもう一方のデータにも変更が反映されるため、作業の2度手間を省くことも可能です。

電子レセプトの作成を行うために必要な「レセコン」

電子レセプトは、提出用の紙レセプトの印刷やそれに付随する添付書類の貼付や編集、さらには細かい保険点数の計算ミスによる返戻率が軽減されるなど、従来の紙レセプト作成作業において必要だった面倒な作業が機械化させることで請求のための作業の大幅な軽減を実現し、歯科診療施設における保険請求業務を劇的に効率化させました。

さらには日々の明細書作成だけではなく、診療報酬の改訂があった場合にも電子レセプトは大きな力を発揮します。厚生労働省が「電子レセプトのメリット」として公表した数字によると、歯科ではなく病院 170床以上の中規模一般医療機関のケースになりますが、病院側のマスター改定作業時間が約120時間から30時間に減ったという数字が示されています。

医療現場において、電子レセプトを作成するためのシステムは一般的に「レセコン」と呼ばれています。

レセコンとは「レセプトコンピューター」の略称で、その名が示すように以前はレセコン作成のためのソフトが組み込まれたレセプト作成に特化したコンピューターを使って作業が行われていました。

しかし最近では、日本においても欧米のようにクラウドサービスの導入が顕著です。クラウドサービスとは、サービス提供者からデータやソフトウェアがネットワーク経由で提供されるもので、以前のように専用のレセコンを購入することなく電子レセコン作成に対応できます。

クラウド型のレセコンの利用には、以下のようなメリットがあります。

メリット1 新たに専用の端末を購入する必要がない

クラウド型のレセコンの場合、利用者は専用のマシンを購入する必要がなく、自前の端末を利用して診療所以外でもサービスを利用することができます。

メリット2 ソフトウエアのアップデートの手間がない

以前のように専用マシンにソフトウェアが導入されているタイプの場合、ソフトウェアにアップデートの必要が生じると、ユーザー自らがアップデート作業をする必要がありました。

一方クラウド型のレセコンの場合、サービス提供者からアップデート済みのソフトウエアが配信されるため、ユーザーは簡単な操作でソフトウエアのアップデート作業を行うことができます。

メリット3 データの管理が容易

従来自前のコンピュータで保管していたデータをサービス提供者の管理に委ねることができるため、ユーザーはパソコンの突然のクラッシュでデータが飛んでしまった、データのバックアップに時間を取られるといった煩わしさから解放されます。

メリット4 導入費用が安い

専用の端末を購入する必要がない分、導入のための初期費用を抑えられることもクラウド型サービスの大きな魅力です。

例えば株式会社ベントサイドでは、歯科用レセコン「アットレセ」と従来型の、導入時の初期費用の違いをホームページに掲載しています。

それによると従来型のレセコンを導入した場合、初期費用としてハード、ソフト(6年リースした場合。利率は1.56%で計算)の費用として2,792,275円(別途保守、バージョンアップ費用として月額11,000円。数字は「歯科機器・用品年鑑2008」の平均数値)が必要であるのに対し、同社のクラウドサービスを利用した場合には、手持ちのパソコンを利用すれば初期費用として必要なのは月額14,410円のみで、レセコンを導入した場合と同様に6年間利用した場合総合計はおよそ1.037,520円となり、単純計算で6年間トータルのコストを約1/3に減らせます。

メリット5 付随業務もこなせる

レセコンで可能になるのは、診療報酬のための明細書作成だけではありません。領収書の発行、処方箋の印刷、自費診療の見積書の作成、診察予約の受付といった業務の電子化も同時に行えます。

さらにはコロナ下で注目を集めた在宅ワークですが、クラウド型のレセコンを導入すればパソコンとインターネット環境があればどこでも作業できるため、診療報酬の明細書作成を自宅でこなすことも可能です。

クラウド型のレセコン導入で業務効率のアップを目指す

現在、健康保険証のマイナンバーカードへの一本化が検討されています。そうなれば各歯科診療施設においても対応を迫られることになります。 外部の状況の変化に手間なく素早く対応できるクラウド型のレセコンは、今後ますますその重要性が高まるはずです。