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人材の教育や育成について、国が過度に口を挟むのは望ましい事ではありません。教育者の自由な創意が尊重されなければ、新しい時代を築く人材は育てられないでしょう。

この考え方を、国家ライセンスを要する職種にまで徹底して拡張し、教育者の自由を最大限尊重するのならば、むしろ一定の要件を満たす設置申請者には養成機関の新設をすべて許可するべきという事にもなります。そのようにして国家ライセンスを要する職種の養成を行う事にすれば、その職種の従事者の数は市場的な制御に委ねられるという事になります。

つまり、過剰に養成することでその職種の価値を下げてしまうという見方もできます。伴って報酬は下がり、新規の参入者が減少し、結局長期的に見れば程よい数に自動的に制御されるのです。

このような市場メカニズムを信頼するならば、教育者の自由を尊重する方法も悪くはないように思われます。しかし、実際にはこのような市場メカニズムは有効に働かないのが現状です。ここで、なぜ有効に働かないのかについて1つ例を挙げましょう。

某法科大学、教育者の自由を尊重して設置された大学の1つです。この例では、想定以上の定員が許可されることとなりました。これにより司法試験をめぐる状況は大きな混乱に陥りました。規制が撤廃されると設置者が殺到し、ひっきりなしに次々と養成機関が誕生します。そこに学生が殺到して、必要数をはるかに超過してしまうのです。設置者・学生双方が現状を冷静に把握して合理的な判定出来ればいいのですが、そんな市場的な自動調整は利かないものです。

この事は経済のバブル景気に似ているように思います。結果どうなるかというと、学校を卒業し資格を取得したとしても肝心の就職先が路頭に迷うという事態を招いてしまうのです。延いては遅かれ早かれ多くの養成機関で欠員だらけになる事が予測されます。このようなあまりにも無駄と言えるエネルギーの消費は防止しなければならないでしょう。