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歯を失ってしまった場合の治療方法には「入れ歯」や「ブリッジ」「インプラント」などがあり、それぞれの特徴があります。中でも近年インプラント治療を選択する方が増えているといわれていますが、外科治療を伴うなど治療のリスクも大きいことから、迷いや不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

国民生活センターによると、インプラント治療による危害情報は毎年60~80件ほど寄せられているといいます*1。

この記事では、厚生労働省が歯科保健医療に関して収集した情報から、インプラント治療を安心して受けるために知っておくべきことなどについて解説していきます。

*1 独立行政法人国民生活センター「あなたの歯科インプラントは大丈夫ですか-なくならない歯科インプラントにかかわる相談-」

インプラントとは

失われた歯の代わりとして顎の骨に人工的な物質(人工歯根)を埋め込んで固定し、その上に人工の歯を装着する治療法が「インプラント」です。

インプラントのほか入れ歯やブリッジなどの方法がありますが、見た目が自然であるという以外にも機能性などの点からインプラントを選択する方が増えてきているといいます。

ここでは、インプラント治療のメリットなどについて解説します。

参考:桜川市で痛みに配慮したインプラント・歯医者なら山王歯科 – どんな仕組みなの?

インプラントのメリット

インプラントは、入れ歯などの治療方法よりも患者さんの満足度が高い治療法であるといわれています。

入れ歯などでは金属部分が見えてしまうといった見た目の違和感がありますが、インプラントではより自分の歯に近い形で装着できます。そのため、笑ったり話したりした時に感じる違和感や他人からの見た目を気にすることもなくなるでしょう。

また、入れ歯よりも噛む機能の回復に優れているのがインプラント治療であることが分かってきました。噛んだ時の異物感が少なく「よく噛んで食べる」ことができるため、食事を美味しく食べることや健康づくりにもつなげることができると考えられます。

インプラントの寿命

インプラントには寿命があります。この場合の「寿命」とは、一般的には埋め込まれたインプラントが撤去されるまでの期間を指します。インプラントを埋め込んだ部位や埋め込む条件にもよりますが、治療後10年で10%程度のインプラントが失われるといわれています*2。

*2 厚生労働省 インプラント国民向け情報提供「安心してインプラント治療を受けるために」

インプラント治療に必要な検査

インプラント治療を行うにあたりさまざまな検査をします。中でも有用とされているのがCT検査です。CT撮影することで得られる3D画像により、顎の骨の形や血管、神経の位置などをより正確に把握してインプラントを埋め込む位置を設定することができます。

このように事前にCT撮影して手術を行うことは、治療後の噛む機能の向上や咬み合わせからくる頭痛や肩こりなどの予防にも役立ちます。

インプラント治療に関するCT撮影の必要性については、一度治療前に主治医に確認してみると良いでしょう。

インプラント治療は誰もが受けられるのか

インプラント治療は、希望すればだれでも受けられるというわけではありません。患者さんの健康状態や体質によって治療が受けられない場合もあります。

ここでは、インプラント治療に影響を及ぼす病気などについて詳しく解説していきます。

インプラント治療に影響する疾患

インプラント治療するにあたり、以下のような病気がある場合には注意が必要です。

[インプラント治療に影響する主な基礎疾患]

循環器疾患(心筋梗塞、狭心症、高血圧など)、呼吸器疾患(喘息など)、消化器疾患(肝炎・肝機能障害、胃・十二指腸潰瘍など)、精神疾患(うつ病、統合失調症など)、脳梗塞、糖尿病、腎炎・腎機能障害、骨粗鬆症、関節リウマチ、金属アレルギー、その他悪性腫瘍など

ここに挙げた以外にもインプラント治療に影響を与える可能性があるため、治療中の病気がある場合には事前に告げるようにしましょう。

安全にインプラント治療を受けるためには、カウンセリングなどで既往歴などを確実に把握しておかなくてはいけません。また、これらの病気があるにもかかわらず未治療の場合には、インプラント治療の前に病気の治療を優先させるべきであるとされています。

歯周病がインプラント治療に及ぼす影響

インプラント治療に悪い影響を及ぼす可能性がある歯周病。歯周病があるとインプラント手術が失敗したり術後早い時期にインプラントを失ってしまったりすることがあります。

そのため、インプラント治療前には歯周病がないか、あった場合にはどの程度の進行状況なのかをチェックし、歯周病の治療を優先することになります。

インプラント治療を検討している方は、定期的に歯周病の有無や進行度合いをチェックしておくのが良いといえますね。

インプラント治療後にすべきこと

インプラント治療は外科手術を伴うため、予想外の不具合や合併症が発生してしまうことがあります。また、自前の歯と同じように口腔内を清潔に保つことができないと、歯周病に似た病気を起こすこともあります。

ここでは、インプラント治療後に発生する可能性のあるトラブルや治療後にすべきことなどについて解説していきます。

インプラント手術に伴うトラブルを知ろう

インプラント手術の際には、まれに神経を傷つけてしまったり異常に出血してしまったりといった予想外のトラブルが生じてしまうことがあります。また、インプラントを埋め込む位置によっては上顎洞(鼻腔とつながる副鼻腔の一部)に炎症を起こしてしまったりする場合もあるようです。

多くの場合は主治医の先生が適切に処置してくれますが、厚生労働省「歯科インプラント治療指針」では「手術を行う歯科医院での対処が困難であった場合、高次医療機関への紹介や搬送を速やかに行える体制を整えておくべきである」としています*3。

インプラント手術を行う歯科医院では、このような体制が整っているのかどうかも確認しておくと万が一のトラブルの際にも安心できますね。

メインテナンスとセルフケアを忘れずに

インプラントの埋め込みが成功しきれいな歯と噛む力を手に入れても、その後のケアを怠ってしまうとインプラントの寿命を縮めることにつながってしまいます。

人工歯根と人工歯から成り立つインプラントですが、その周囲に歯周病と似たような症状を発症することがあります。これが「インプラント周囲炎」です。

インプラント周囲炎を予防するためには、メインテナンスとセルフケアが重要です。メインテナンスとは、歯科治療後に歯(インプラント)や歯肉のチェックやお口の中の清掃を受けることをいいます。定期的にメインテナンスを行うことでインプラント周囲炎を予防しましょう。

また、インプラントでは自前の歯よりも入念な手入れが必要であるといわれています。ブラッシングなどの日常的なセルフケアは、インプラント治療前と同じように行いましょう。必要に応じてデンタルフロスなどを用い、お口の中を清潔に保つことが大切です。

*3 厚生労働省「歯科インプラント治療指針」

不安を解消し安心してインプラント治療を受けよう

失われた歯の代わりに顎の骨に人工歯根を埋め込み、それを土台として人口の歯を装着する治療方法がインプラント。インプラントは、口元の美しさだけではなく噛む機能の回復が図れる治療法であることが明らかにされています。

しかし「どんな検査が必要なのか」「手術は安全なのか」など、多くの不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。

今回は、厚生労働省が最近の研究で明らかになったインプラントに関する情報をまとめた資料をもとに解説してきました。

この記事がインプラントに関わる正確な情報を得るきっかけとなり、治療に対する不安を取り除く手助けになれば幸いです。