医療現場における複雑な課題の一つ、それがモンスターペイシェントです。理不尽な要求を繰り返し、医療スタッフに過度のストレスを与えるこの現象は、どの医療機関でも共通して直面する問題といえるでしょう。しかし、その背後にはさまざまな原因や背景が存在します。この記事では、そんなモンスターペイシェントの特徴や原因、そして適切な対処法を掘り下げていきます。
モンスターペイシェントとは?
「モンスターペイシェント」とは、医療従事者や医療機関に理不尽なクレームや無理な要求を突きつけたり、暴力をふるったりを繰り返す患者を指します。当然ながら、この言葉は正式な医学用語ではありませんが、現場での厳しい現実を表す一方で、患者だけでなく、そのご家族までが該当するケースも少なくないという現状が反映されています。
モンスターペイシェントと向き合うことは、医療従事者に大きなストレスをもたらします。そのストレスは時間と共に蓄積し、精神的に消耗してしまう方も多いのです。このような経験が続くと、最終的には離職を選ぶ人も出てきます。
さらに、モンスターペイシェント対応に多くの時間を使うことは、他の患者のケアや治療に影響を及ぼす可能性があります。
モンスターペイシェントの特徴
医療現場で起こりうる様々な問題のひとつであるモンスターペイシェント。
ここではモンスタ―ペイシェントの特徴をいくつか挙げていきます。
理不尽なクレーム
まず、理不尽なクレームを言ってくるという点です。
例えば、適切な治療を受けているにもかかわらず「下手な医者!」と罵声を浴びせられること、医院のルールを守るよう優しく指導したにも関わらず、「自分勝手な決定には従わない」と反発されることなど、事実に基づかない非難がなされる場面があります。
しかし、ここで注意したいのは、クレームそのものが悪であるというわけではない、ということです。日本ではクレームという言葉が多くの場合、苦情や不満を表す意味合いで使われますが、その一方で、医療従事者や医療機関に不手際があった場合、患者からのクレームは正当な主張ともいえます。このような声は、真摯に受け止めて改善に取り組むべきだと考えられます。
つまり、モンスターペイシェントとされる行動と、正当なクレームとを見分けることが重要となります。それは、問題解決への道筋を示すだけでなく、医療の質を向上させるための一歩ともなるからです。この視点は、日々の診療の中で大切にしたいポイントと言えるでしょう。
無理な要求をしてくる
医療現場でしばしば言及される「モンスターペイシェント」。彼らの特徴のひとつとして、無理な要求を繰り返す点が挙げられます。「他の方より先に診てほしい」「診察をせずに薬だけ出してほしい」など、自己中心的な要求が頻繁になされます。いくら断っても納得せず、むしろ憤怒したり、場合によっては激情にかられたりすることもあるのです。これらの患者からの連続的な要求には、精神的な疲弊を伴うことも少なくありません。
また、モンスターペイシェントと呼ばれる人々は、自分たちの要求が正当であると固く信じています。そのため、どれだけ話し合っても結論が出ません。
治療費を払わない
さらに厄介な事例として、自分の要求が通らなかったことを理由に、治療費の支払いを拒むケースも存在します。明らかに適切な治療が施されているにも関わらず、自分の意向に反すると支払いを拒否します。これに類似した行動として、特に要求やクレームはないものの、様々な理由をつけて治療費を踏み倒す人々も、モンスターペイシェントの一部とみなされます。
患者がモンスターペイシェントになる原因
ではなぜ、患者がモンスターペイシェントになってしまうのでしょうか?
それらの原因は患者側の原因と医療関係者側の原因どちらも存在します。
患者側の原因には、医療に対する過度な期待や自己中心的な態度が含まれます。完全な治癒を求めて医療機関を訪れた患者が、病気や怪我が必ずしも完治しないという現実を受け入れられず、「裏切られた」と感じる場合もあります。また、患者自身が特別な待遇を受けるべきだと信じ込んでおり、その期待が満たされないときに、モンスターペイシェント化することもあります。さらに、日常的に高いストレスを感じている人が、そのストレスをぶつける対象として医療機関を選ぶことも少なくありません。
一方、医療従事者側の行動もモンスターペイシェント化に影響を及ぼすことがあります。患者や家族が抱える不安に対して十分な配慮を示さない、適切な説明を省略する、患者に対して不適切な態度を持つなどの行為は、モンスターペイシェントの誕生を促す可能性があります。
モンスターペイシェントに遭遇した時の対応の仕方
モンスターペイシェントの特徴や原因が分かったところで、モンスターペイシェントに遭遇した際の対処法をお伝えします。
患者の言い分を聴く
まず、患者の言い分をしっかりと聞きましょう。理不尽な要求に対してはうんざりするかもしれませんが、適当に聞き流すのはやめましょう。状況が悪化する可能性がかなり高いです。相手の話をきちんと耳にすることで、その本心を理解することができます。
安易に譲歩しない
次に、患者の言い分が不当な要求だった場合、安易に譲歩せず断固として対抗しましょう。対応が難しいからといって、不適切な要求を受け入れてしまうと、その行為がエスカレートする危険性があります。また、他の患者への影響も考えられます。適切な対応を続けることで、問題の拡大を防ぎましょう。
一人で対応しない
最後に、1人での対応は避けて、複数人で対応することが重要です。これは、状況の把握を正確に行い、問題がエスカレートすることを防ぐためです。また、精神的な負担の軽減や、万が一の暴力行為への対応も可能になります。ただし、混乱を避けるため、話の窓口は一つに絞りましょう。
まとめ
今回はモンスターペイシェント問題について、詳しく解説してきました。特徴と原因を理解し、効果的な対処法を把握することが大切です。